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中野自動車商会 中野忠浩のブログ(燕市)0120-559-154

新潟県燕市旧分水地区で50年以上営業している中野自動車商会の2代目のブログ。車検・鈑金・ロードサービス・バッテリージャンピング・保険修理・4輪ホイルアライメント・パンク修理


by 中野 忠浩

あの頃の忘れ物

矢沢永吉のチャイナタウンという曲からのイメージで

お客様感謝祭を企画するという

ちょっと意味のわかりにくいことを

やってみようと思った。

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あの頃の忘れ物

   同級会の当日、今になって思えば確かに
   俺は腹を立てていたのだろう。
   迎えに来た古くからの友人に挨拶もせず、
   彼のファミリータイプのミニバンに渋面で乗込むと、
   車内に流れる賑やかな歌謡曲に早速文句をつけた。
  
  「娘がファンなんだよ。嫌いかAKB?」
  曲が ももクロに替わる。

  「似合わないんだよ、車も音楽も変わり過ぎだろ」
  と俺は攻め立てた。

  「家族が増えるとどうしてもな」
  とばつが悪そうに頭をかく友人だったが、

  「だったらお前は、昔と変わらずマニュアル信者だよな?」
  と切り返す。

  「いや、俺も家族がうるさいからオートマだ」
  俺は小声で答え、下を向く。

  学生の頃、友人は父親から
  お下がりの古いクーペを譲り受けた。
  
  ツードアの4速マニュアル車。
  丸型のヘッドライトと大型フェンダーミラーを
  輝かせながら、カーステレオのカセットデッキにテープを押込み、
  大好きな曲を
  大音量で聴きながら車を走らせた。
  車と音楽はあの頃の憧れだった。
  
  俺達は一人のロックスターに夢中だった。
  白いスーツに身を包み、
  マイクスタンドを巧みに操りながら歌うリーゼントの男に。
  髪形も真似、
  同じ銘柄の煙草を悪ぶって吸ってはむせて笑った。
  「ハイライト」ライトブルーの箱が憧れだった。
  いつかあんな男になってやると二人でよく話していた。

  陽が落ち始める夕方、友人のミニバンは
  思い出の風景を走って行く。
  面影が残る駅前通を過ぎ、
  長く狭い坂道を登り切ると、沿岸沿いに
  通いなれた街が眼下に広がった。
  その時ふと、そのフレーズは頭をよぎった。

  ‘あのレコードは もう捨てただろう‘

  リーゼントの男は俺に問いかけた。
  それはあの車で聴いていた曲の一節。
  夕日が懐かしい街を染めゆく中、
  あの頃の自分と今の自分が重なり合う。

   俺達は夢見た自分になれているだろうか。
   憧れていたあの男に、少しでも近づけているのだろうか。
   寂しさが胸を締め付ける。
   俺達はあの頃を捨ててしまったのだろうか・・・・・・・

  信号が赤になり友人は曲を替えようとしていた。
  『マイベスト』
  昔のテープみたいなタイトルのフォルダを開いている。
  どうせ娘の物だろう
  これ以上チャラチャラした曲を聴かされるのが嫌になり
  俺は声をかけた。

  「なあ、あの曲名、覚えていないか?
   ‘チャイナタウン‘の歌詞に出てきた曲。
  お前の車でおく聴いただろ。
  ほら、二人で中古レコード屋を探し回って
  やっと見つけたヤツだよ。
  なぜか急に聴きたくなってさ・・・・・・」
  
  どうせ覚えてはいないだろうけど・・・・。
  心の中で呟いた。

  一瞬だけ友人の顔が強張った気がした。
  選曲が済んだのか、彼は
  液晶画面に指を置いたまま頭を斜めに傾け、
  俺の顔を不思議そうに見つめていた。
 
  賑やかだった車内が急に静まり、
  聞き覚えのあるメロディが流れ始める。
  オーティス・レディングの歌声と共に、
  止まっていた時間が動き出した。

  「ドッグ・オブ・ザ・ベイ・・・・・。
  俺も今、思い出してたところだよ」

  旧友はポケットからライトブルーの箱を取り出し、
  ハイライトに火を点ける。
  俺は無性に、
  4速マニュアルの古いあのクーペに乗りたくなった。

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3月7,8日 お客様感謝祭を企画してます。

車と、音楽にこだわった

企画にします。

よかったら遊びに来てください。
by nakano-auto | 2015-02-19 19:55 | 日常 | Comments(0)